早産の赤ちゃん

早産児に多い健康上の問題

早く生まれた赤ちゃんの多くが経験しやすい健康上の問題について解説します。

呼吸器の問題

赤ちゃんは、出生するまで羊水の中にいて肺を使って呼吸をしていないため、肺が十分に発達していません1)。そのため、早く生まれた赤ちゃんでは肺の機能が未熟な場合が多いです1)

呼吸器のしくみ1)

鼻や口から入った空気が、気道から気管、気管支、細(さい)気管支、肺胞(はいほう)に入り、肺胞で二酸化炭素と酸素が交換されます。

呼吸器のしくみ_イラスト
※イメージ図

新生児一過性多呼吸(しんせいじいっかせいたこきゅう)1)

原因

おなかの中にいる赤ちゃんの肺は液体(肺液(はいえき))で満たされていますが、通常生まれるときに肺液は排出・吸収されてなくなります。早産児では肺液を吸収する効率が悪く、呼吸を妨げるため、呼吸の際に取り込む酸素の量が少なくなります。

症状

呼吸回数が多くなります。

治療

ほとんどの場合、酸素投与を行い肺液の吸収を促すだけで数日以内に回復し、予後は良好です。

出生時

産道を通るときに、肺液の一部は排出されます。_イラスト

産道を通るときに、肺液の一部は排出されます。

残りの肺液は、次第に吸収されていきます。_イラスト

残りの肺液は、次第に吸収されていきます。

呼吸窮迫症候群(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん)1、2)

原因

肺の中にある肺サーファクタントという肺胞(はいほう)を膨らみやすくする物質が足りないため、肺胞がつぶれて、呼吸がしづらくなります。

症状

呼吸が速くなる、呼吸のたびに肋骨(ろっこつ)の間や胸の中心が沈み込む、小鼻が広がる、ウンウンとうめく(特に重度の場合)、皮膚が紫がかり青みを帯びてくる(チアノーゼ)などがみられます。

治療

人工呼吸器による酸素吸入を行います。そして、人工の肺サーファクタントによる治療を行います。気管に入れたチューブから人工肺サーファクタントを肺の中に注入します。

肺胞(はいほう)がつぶれている状態

肺胞がつぶれている状態_イラスト

肺胞(はいほう)が膨らんだ状態

肺胞が膨らんだ状態_イラスト
※イメージ図

慢性肺疾患(まんせいはいしっかん)1、2)

原因

在胎期間がきわめて短い赤ちゃんの発達段階の未熟な肺に対して、おなかの中(絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん))や生まれた後の感染症や炎症、呼吸窮迫症候群(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん)や人工呼吸器による肺の損傷などが加わり発症します。

症状

浅く速い呼吸と呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)(ヒューヒューやゼイゼイ)、湿性ラ音(肺がプチプチと音を立てる状態)などがみられます。

治療

長期間にわたって、ときには退院したあとにも酸素吸入が必要な場合があります。また、呼吸を助けるお薬(ステロイド剤など)を処方することもあります。

人工呼吸器による酸素吸入
または経鼻高流量酸素療法(HFNC)*

人工呼吸器による酸素吸入または経鼻高流量酸素療法(HFNC)*_イラスト
  • 経鼻高流量酸素療法(HFNC、ネーザルハイフロー):高流量の酸素・空気混合ガスを経鼻カニュラ(鼻から入れて肺まで通す管)を通して吸入する酸素投与方法。

心臓(循環器)の問題

赤ちゃんは、おなかの中にいるときはお母さんから胎盤で酸素を受けとり、出生後は自分の肺を使った呼吸により酸素を得ています1)。このため、出生前と後では心臓や血管のしくみが変化します1)

循環器のしくみ1)

出生後

循環器のしくみ 出生後_イラスト

肺で酸素を受けとった血液は、心臓の左側(左心房(さしんぼう)・左心室(さしんしつ))から大動脈を通り、全身の臓器に送り出されます。全身から戻ってきた血液は、心臓の右側(右心房(うしんぼう)・右心室(うしんしつ))を通り肺へ送られます。

出生前

循環器のしくみ 出生前_イラスト

お母さんのおなかの中にいるときは肺を使わず、胎盤から酸素を受けとるため、肺へ行くはずの血液のほとんどは、心臓の左側(左心房・左心室)に行く構造になっています。そのため、胎児では右心房に孔(あな)があいていたり(卵円孔(らんえんこう))、右心室から全身に血液を送る血管へバイパスがあったりします(動脈管(どうみゃくかん))。

※イメージ図

動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)1)

原因

通常、生後2日までに自然に閉じる動脈管が開いたままのため、全身に送られるはずの血液が大量に肺に流れます。

症状

全身に送られる血液量(酸素量)が減るため、呼吸や脈拍が速くなって心臓に負担がかかったり(心不全)、臓器が酸素不足になります。

治療

ほとんどの赤ちゃんはお薬で治療することができ、動脈管が閉じるまで何回か血管からお薬を投与します。お薬が効かない場合は手術を行います。

血液の問題

赤ちゃんは、おなかの中では胎盤で酸素を効率よくもらうために赤血球をたくさんつくっていますが、出生後は赤血球をつくる量が減ります1)。また、赤ちゃんでは赤血球の寿命が短く、大人の約2/3(約80日)です1)

貧血1、2、3)

原因

赤血球の中にある、酸素を運ぶヘモグロビンが足りないために起こります。理由として、次のことが考えられます。

  • 新生児の赤血球は、大人の赤血球より寿命が短く早く壊れる
  • 赤血球の産生が低下する
  • 臨床検査用に何回か採血するため、血液が減る など
症状

軽い貧血の場合、症状が出ないことが多いですが、程度が重いと活動性が低下したり、ミルクを飲まなくなるなどの症状が出ることがあります。
また、早産の赤ちゃんでは、正期産の場合と比べて、貧血の進行が速いことが多いです。症状がないこともありますが、脈が速くなる、無呼吸発作が悪化する、または体重増加不良などがみられることがあります。

治療

重度の貧血では、輸血をしたり赤血球の産生を促すお薬を投与します。貧血が続く場合には、退院後も鉄剤を投与することがあります。

黄疸(おうだん)(高ビリルビン血症)1、2、4)

原因

黄疸は、赤血球が壊れたときに出るビリルビンという黄色い色素がからだの中で増えすぎて、肝臓でビリルビンを素早く処理できないときに現れます。
ほぼすべての新生児で生理的な黄疸がみられ、一般に生後2~3日に現れます。十分に哺乳が進んでいない赤ちゃんでも黄疸が起こることがあります。その他、何らかの問題で赤血球が大量に壊れてしまう病気のために、黄疸が出ることもあります。また、早産の赤ちゃんの場合、肝臓がより未熟であるために、黄疸になりやすいとされています。

症状

ビリルビンが血管からあふれて赤ちゃんの皮膚やしろ目(眼球結膜(がんきゅうけつまく))を染めるため、皮膚やしろ目が黄色くみえます。

治療

生理的黄疸は2週間以内に治まるため、通常治療は不要です。
治療が必要な黄疸のときは、体に光をあてる光線療法や交換輸血を行います。

黄疸(おうだん)の機序

黄疸の機序_イラスト

ビリルビンの沈着で、皮膚やしろ目が黄色くなる。

光線療法

光線療法_イラスト

光線療法により、水に溶けるビリルビンにして、排出を促します。

※イメージ図

脳・感覚器の問題

妊娠の初期から脳などの神経系器官はつくられ始めますが、予定どおりに出生した赤ちゃんでも脳はまだ成熟していません2)。早く生まれた赤ちゃんでは、脳や感覚器の発達が未熟である場合があります1、2)

無呼吸発作(むこきゅうほっさ)1、2、4)

原因

脳の中の呼吸をつかさどる部分(呼吸中枢(こきゅうちゅうすう))が十分に成熟していない、呼吸を行う筋肉が弱い、などの理由で起こることがあります。また、感染症が原因となることもあります。

症状

呼吸が止まった状態が20秒以上続いたり(無呼吸)、脈拍が遅くなります(徐脈(じょみゃく))。無呼吸に伴って、皮膚が紫がかったり、青みを帯びてくることもあります(チアノーゼ)。

治療

NICUではモニタで管理し、発作時は看護師が赤ちゃんを優しく揺り動かすなどして皮膚刺激を与えます。
また、呼吸を促すお薬や低濃度の酸素を与えたり、経鼻式持続気道陽圧(nasal CPAP:ネーザルシーパップ)*1や経鼻高流量酸素療法(HFNC:ネーザルハイフロー)*2による呼吸管理を行います。多くの場合、赤ちゃんが成長するにつれて改善します。

  • *1

    経鼻式持続気道陽圧(nasal CPAP:ネーザルシーパップ):気道や肺に圧をかけ肺がしぼみきらないようにし、気道を広げて空気を通りやすくして呼吸を楽にする方法。

  • *2

    経鼻高流量酸素療法(HFNC:ネーザルハイフロー):高流量の酸素・空気混合ガスを経鼻カニュラ(鼻から入れて肺まで通す管)を通して吸入する酸素投与方法。

未熟児網膜症(みじゅくじもうまくしょう)1、2、4)

原因

出生後、網膜(もうまく)に異常な血管の成長が起こる病気です。徐々に進行するタイプ(Ⅰ型)と、急速に進行するタイプ(Ⅱ型)があります。Ⅱ型は、超低出生体重児に起こりやすく、急速に網膜剥離(もうまくはくり)へ進行し、失明する危険性のあるタイプです。

症状

視力に影響を及ぼすことがあります。

治療

Ⅰ型は自然に治る傾向がありますので、経過をみながら定期的に眼科診察を行いますが、症状が強くなった場合は、血管の異常増殖を止めるため、レーザー治療や抗血管増殖因子の注射を行います。Ⅱ型は進行が早いため、診断がつき次第、すぐに治療します。

正常な眼底(網膜)

正常な眼底(網膜)_イラスト

網膜の血管が、網膜の全域に伸びています。

未熟児網膜症(みじゅくじもうまくしょう)の眼底(網膜)

未熟児網膜症の眼底(網膜)_イラスト

網膜の血管が十分に発達しないうちに出生し、しばらく成長が止まります。その後、成長が再開したときに血管から出血して視力に影響を及ぼします。

※イメージ図
  • 1)

    楠田 聡 監. 新生児の疾患・治療・ケア: 家族への説明に使える! イラストでわかる. メディカ出版. 平成28年4月第2版

  • 2)

    一般社団法人 日本新生児成育医学会 編. 新生児学テキスト. メディカ出版. 平成30年12月第1版

  • 3)

    みずほ情報総研株式会社 小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査研究会. 低出生体重児保健指導マニュアル 小さく生まれた赤ちゃんの地域支援. 平成31年3月

  • 4)

    仁志田博司 編. 新生児学入門. 医学書院. 平成30年11月第5版

監修:長谷川 久弥 先生
東京女子医科大学附属足立医療センター 新生児科 教授