心疾患の赤ちゃん

健康上の注意点

ここでは、心疾患のある赤ちゃんによく見られる健康面での症状や、予防・対処の仕方について紹介します。

赤ちゃんの状態を把握しましょう

体重を量りましょう

赤ちゃんの発育状態を把握するために、できれば月1~2回ぐらいの頻度で体重を量りましょう。体重を測定したら、母子健康手帳などに記録しておき、受診の際に主治医に見せましょう。体重の変化をみるのは、赤ちゃんの心臓の状態を判断するためにも大切です。赤ちゃんのからだは自分の心臓の状態に見合うように、体重を調整しています。体重を測定してみて、体重が増えていないなど、何か気づいたことがあれば、主治医に相談してみましょう。

呼吸の状態に注意しましょう

赤ちゃんの状態が悪いと、呼吸が苦しそうになります。以下の状態が続く場合には、医師に相談しましょう。

呼吸器系への影響

安静時(静かに眠っているとき)の呼吸が、下記の回数より多い場合は注意しましょう。

安静時の1分間の呼吸回数の目安1)
新生児 40~60回
1歳 30~40回
3歳 25~30回
5歳 20~25回

呼吸の状態が悪くなる(呼吸困難)

  • 息苦しくなり、肩や顎(あご)や小鼻を動かして、一生懸命に呼吸する。
  • 呼吸するごとに、とくに息を吐くときに、うなり声を出す(呻吟(しんぎん)呼吸)。
  • 息を吸うときに、胸骨や鎖骨の上、肋骨の間、みぞおちなどがへこむ(陥没(かんぼつ)呼吸)。
  • 1)

    斎藤 博久. 小児科診療. 2006; 69(5): 705-709.

症状(顔色、呼吸)のみかた

赤ちゃんの心疾患の状態は、顔色や呼吸の様子をみることでわかることがあります。気になる症状があれば医師に相談しましょう。その際は、症状の詳細(時間や状態)を記録するといいでしょう。

心不全でよくみられる症状1)

心臓への負担が大きくて心臓が弱り、全身へ十分に血液を送ることができない状態です。次の症状に注意しましょう。

  • 顔色が青白くなる
  • まぶたがむくむ
  • 汗をたくさんかく
  • 手足が冷たくなる(循環不良)
  • 呼吸が速くなる
  • 寝かせるよりも、抱っこしたほうが呼吸が楽になる(抱き方によっては、胸部を圧迫して必ずしも楽にならないので注意)
  • うつ伏せ寝のほうが楽に見える(この場合、硬めのマットにして、寝具が口や鼻を塞がないように気をつける)
  • ミルクを飲む量が少ない/休み休み飲む/ムラ飲みが目立つ
  • 飲むときにゼイゼイいったり、むせたりする
  • 体重の増え方が悪い
  • 1)

    合同班研究参加学会 : 先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン2018. 2018年改訂版 2019年発行

チアノーゼでよくみられる症状

酸素の少ない血液が、からだを循環することで起こる状態です。次の症状に注意しましょう。

  • 顔色が悪い
  • とくに爪や唇が紫色
  • ミルクを飲むのに時間がかかる/休み休み飲む
  • 飲むときに、呼吸が速くなる
  • 飲むとき、飲んだあと、チアノーゼが強くなる
  • 泣いたとき(とくに長い時間)、普段よりもさらに顔色が悪くなる
  • 寒い朝、哺乳時/後、排便時/後などに、急に呼吸が速くなりチアノーゼが強くなって、泣いたり、逆にボーッとしたりする(チアノーゼ発作:“スペル”ともよばれます)
  • パルスオキシメータをお持ちの場合は、普段の酸素飽和度と比較して値が低下していないか確認しましょう。

貧血でよくみられる症状

からだの中の鉄分が少ないため、酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンが減っている状態で、唇の赤い色が薄くなります。少ない赤血球・ヘモグロビンで全身に十分な酸素を運ぶためには、心臓がたくさんの血液を送り出す必要があるので、はたらく量が増えてしまいます。

かぜと呼吸器感染症について

心疾患のある赤ちゃんでは、かぜにかかると重症化することがあります

かぜの主な原因はウイルス感染です。その他、細菌などにより引き起こされる呼吸器感染症もあります。
ウイルスではインフルエンザウイルスが有名ですが、乳幼児ではRSウイルスによる呼吸器感染症が多いです。1歳までに半数以上、2歳までにほぼ全員がRSウイルスに感染します1、2)

とくに、心疾患の症状のある赤ちゃんがRSウイルスにかかると、細気管支炎や肺炎などを起こして、急激に重症化することがあります。重症化すると喘鳴(ぜんめい)(ゼイゼイ、ヒューヒューとした呼吸)が出たり、呼吸が速く、苦しくなったりします。呼吸困難や無呼吸がみられて、入院治療が必要な場合もあります。また、心疾患の症状(心不全やチアノーゼ)が悪化するおそれもあります。

現在、RSウイルス感染症に対する有効な治療薬はなく、かかってしまったら症状を和らげる治療をしながら治るのを待つしかありません。命にかかわる場合もあります。そのため、しっかりとした予防を心がけ、感染の機会を減らすことがとても大切です。

  • 1)

    Glezen WP, et al. Am J Dis Child. 1986; 140(6): 543-546.

  • 2)

    Hall CB. Contemp Pediatr. 1993; 10: 92-110.

かぜやウイルス性胃腸炎を予防するには?

かぜのウイルスは、咳、くしゃみ、鼻水、痰などから感染します(飛沫感染)。胃腸炎のウイルスは口からからだの中に入り、胃腸に入って感染します(経口感染)。ウイルスに感染しやすい場面はさまざまあるので、家族全員が協力して、できるだけウイルスと接触しないような環境をつくることが重要です。次のことを心がけましょう。

かぜをひいている人との接触を避ける/人ごみを避ける

かぜをひいている方のお見舞いや面会はお断りしましょう。
家庭内でも、かぜをひいたらマスクをしたり、部屋を別にするなど、うつさないように。ほとんどの場合、ウイルスはかぜをひいた家族から感染します。
大人にとっては軽いかぜでも、赤ちゃんにとっては重い症状を引き起こすことがあります。RSウイルスはそのようなウイルスの代表で、大人の社会ではほとんど問題になりませんが、赤ちゃんにうつしてしまうと大変です。
病原体であるウイルスを寄せ付けないようにしましょう。

手洗い、うがいの励行

外出後は、家族を含め、手洗いうがいを励行し、からだを清潔に保つようにしましょう。

身の回りのものの清潔を
心がける

赤ちゃんが、口に入れるものは、アルコールティッシュで消毒するなどして、常に清潔にしましょう。
また、オムツの処理もきっちりしましょう。

予防接種を受けましょう

感染症の重症化を防ぐために、予防接種はなるべく受けさせたほうがよいでしょう。
国で推奨している接種スケジュールがありますが、季節やそのときの流行などで、受けたほうがよい予防接種の順番が変わることがあります。予防接種の種類やタイミングは、主治医と相談して決めましょう。

心疾患のある赤ちゃんは、できるだけ主治医や、主治医と連携している医師から予防接種を受けるとよいです。難しい場合は、予防接種をする医師に、以下の内容で該当することがあれば必ず伝えてください。

  • 強い心不全があり、薬を飲んでいる場合
  • チアノーゼ発作がある場合
  • 手術前1~2か月
  • 手術後1~6か月以内
    (手術のときの輸血の有無によって異なりますので主治医に確認してください)

また、次の症状がある場合は予防接種を避けるようにしてください。
気になることがありましたら、主治医にご相談ください。

  • 37.5度以上の発熱があるとき
  • 重篤な急性疾患にかかっているとき
  • 以前、ワクチン接種で重篤な副反応を経験している場合
  • 卵、抗生物質、ゼラチンなどでショックを起こしたことがある場合
  • 免疫不全のある場合
  • 1年以内にけいれんを経験している場合(熱性けいれんを除く)

感染性心内膜炎のリスクを減らすために

感染性心内膜炎は口腔内や皮膚の上などにいる弱い細菌(常在菌)が、出血している部分から血液中に入り、心臓で増殖して細菌の塊になる病気です。心不全や脳梗塞を起こし、治療が困難で、ときには命にかかわることがあります。
先天性心疾患のあるお子さんでは感染性心内膜炎になるリスクがありますので、以下のことに注意しましょう。ただし、すべての先天性心疾患のお子さんがリスクが高いわけではありませんので、主治医に聞いて相談してください。

虫歯を予防する

小さいときから歯をよく磨いて虫歯にならないようにしましょう。赤ちゃんでは、湿らせた脱脂綿で歯をぬぐうだけでもよいでしょう。歯や口の中をきれいにしておくという習慣を身に付けることが大切です。

出血する可能性のある治療を受ける前に、医師に伝える

感染性心内膜炎のリスクのある先天性心疾患のお子さんが、歯科、皮膚炎(おでき)、耳鼻科、扁桃腺摘出(へんとうせんてきしゅつ)などの出血を伴う治療を行うときには、治療前に抗菌薬を飲んで予防します。お薬は事前にもらっておくとよいでしょう。なお、きれいな歯の自然抜歯はリスクになりませんが、虫歯の抜歯にはリスクがあります。

感染性心内膜炎を疑うときは?

歯科や耳鼻科の治療のあと、しばらく熱が出たり下がったりという状態が続き、それ以外に何も症状(たとえば、咳や下痢)がみられない場合に疑います。主治医に連絡してください。

監修:長谷川 久弥 先生
東京女子医科大学附属足立医療センター 新生児科 教授